多自由度システム情報論講座

多自由度コロキウムとは

多自由度コロキウムは、講座の枠を超えた学術交流を目的とする講演・討論会です。講師を招待し、聴講・議論を行います。興味のある方の参加を歓迎します。

第1回

集団の子孫数分布の偏りがもたらす異常拡散現象

要旨:

通常の集団遺伝学の理論・統計手法では、集団内の個体ごとに子孫数のばらつきが小さいことが仮定される。しかし、多くの海洋性生物、ウイルス集団では子孫数のばらつきが非常に大きいため、集団遺伝学の標準的な知見がこれらの生物種に当てはまるのかは明らかではない。このような背景で我々は、子孫数分布の過分散が進化ダイナミクスに及ぼす影響を理論的に明らかにした。本セミナーでは、集団遺伝学の基礎的なモデル(Wright-Fisher model)を紹介し、子孫数の過分散が進化ダイナミクスに及ぼす影響を議論する。また、子孫数の過分散が実際の遺伝的データにどのように顕れるかを、季節性インフルエンザ、コロナウイルスの例に基づいて紹介したい。

参考文献:

  1. Takashi Okada, and Oskar Hallatschek. Genetics 219.4 (2021): iyab135
  2. QinQin Yu, Joao A Ascensao, Takashi Okada, Olivia Boyd, Erik Volz, Oskar Hallatschek, https://doi.org/10.1101/2022.11.21.517390, bioRxiv (2022)